CHASSIS
MAZDA GOODS SHOP
「シャシモデル」の狙いについて。
ロードスターは単なるカッコだけでなく心技体を兼ね備えたクルマです。
その中身の素晴らしさをもっと知ってもらいたい、視覚で味わいたい、という思いで企画したので、ロードスターのオーナー(企画した私自身もその一人)や、これからオーナーになろうとする方がロードスター乗りの証として、クルマとの絆を深めるアイテムになれれば本望です。
ですが、ロードスターファンに限らず、マツダのクルマづくりの姿勢に共感する方々の心にも響くアイテムになり得ると思っています。
実際に本商品を購入されたお客様の中には、ロードスター以外のマツダ車オーナー様や他社銘柄のオーナー様もおられます。
本体は結構大きいですね。
モデルカーの世界では1/64、1/43、1/18、1/12といったスケールが一般的ですが、諸々検討した結果1/12としました。
企画当初は1/18を想定していましたが、縮尺サイズをシミュレーションすると意外と「こじんまり」していてインパクトと「ありがたみ」が弱いのと、1/18で再現しようとすると部品が極小となります。
極小部品の場合、手作業による組立の難易度は一気に上がり、増えた工数は製造原価に跳ね返ります。
サイズと価格は比例するとは限らない事がわかりました。
(写真は1/43スケールのモデルカーとの比較)
結果的には1/12スケールは観賞して楽しむのにちょうどよいサイズになったと思います。
そして観賞する事を考慮した特注サイズの透明アクリルケースも日本製で高級感があります。金型成型の既製品流用でなく、手間のかかるパネル貼り合わせで製作したので角が直角をキープしています。
手に取ってみると結構重いですね。
ロードスターは軽さが身上のクルマなのに、この製品は結構重量がありますが、これはホワイトメタルという金属を主に使用しているためです。
ホワイトメタルは小ロット生産に向いた材料なのと、製造時の加工性と強度を考慮して選定したのですが、それを逆手に取って、ヘッドカバーやパワープラントフレームはこの金属感を活かし素地状態にクリアー塗装としました。なお、本体が重量のあるものになった関係で本体はディスプレイ台に固定となり、取り外しての観賞はできない仕様です。
商品化までに苦労したのでは?
…ですね。弊社では前例のない商品だったのでトライアンドエラーの繰り返しでしたが、他社で同類製品があるのはわかっていたので、決して不可能ではないと算段していました。
企画当初は周囲にあまり理解されず「独りよがり」と受け止められていました。どんなに魅力的な商品であっても、あくまでビジネスなので採算性が見込める事が必須条件です。なので、企画承認のためには潜在的ニーズが存在する事を証明する必要があり、まず取り組んだのが商品化の是非を問う草の根の署名活動でした。
マツダ社内やロードスターのオーナーズクラブ、イベント会場でのグッズ販売ブース等で署名活動を行い、200名以上の署名を頂きました。
合わせて熱い応援メッセージも頂き、この企画は決して独りよがりではなかったんだと非常に勇気づけられました。そのメッセージは今でも大切な宝物です。この署名が商品化社内決裁の重要な判断材料になりました。
めでたく開発着手の承認が取れ、開発の進捗をオーナーズクラブの会報誌や弊社グッズ紹介サイト等で報告していました。が、開発から発売まで、いくつものハードルがあり難航、目標としていたスケジュールからも大幅にずれ込み、お客様に度重なる遅延のお詫びをした際にも、お叱りを受けるのではなく「多少時間がかかってもいいから納得いくものを作ってください」と逆に励ましの言葉がありました。それを言い訳にしてはいけないんですが。。。
「メイドインジャパン」なんですね。
そうです。開発から製造まで全て国内で行いました。協業先は鳥取県米子市にある「日下エンジニアリング」さんで、某N社の1/6スケールのエンジンモデルをプロデュースした、その筋だと大変有名な会社です。開発のコミュニケーションといった面で、日下エンジニアリングさんの所在地が広島県から比較的近い鳥取県であった事も結果的によかったです。
モノがモノだけに引き受けてもらえるメーカーさんもなかなか見つからない中、ある別のメーカーさんと具体的な話まで詰めていたのですが、コストの折り合いがつかず社内決裁が通りませんでした。企画が暗礁に乗り上げて諦めかけてたところに、前述の1/6スケールのエンジンモデル発売の情報を知り、ココなら製品化できるのでは?と一縷の望みをかけてコンタクトしました。
企画の相談をメールした後、体よく断られそうな返信だったのですが、社長の佐々木さんご自身も大のクルマ好きで、こちらの気持ちと熱意が伝わったのと同時に「負けず嫌いのモノづくり魂」に火が付いたのか、まずはやってみましょうと協力が得られました。
実際に商品が納品されるまで、こちらからの相当な無理難題やワガママを聞いてくださり、振り返って見れば、日下エンジニアリングさんが引き受けてくださらなければこの商品は実現し得なかったと思います。
この製品の自慢のひとつとして排気管の塗装仕上げがあります。佐々木さんの「ツテ」で、モデルカー業界では有名なモデルフィニッシャー(愛好家の依頼で1点モノのアーティスティックなモデルカーを制作する職人さん)の方の協力を頂き、その匠の技を駆使して排気管の「焼き色」表現を施していただきました。このような仕上げは通常一点モノのモデルで行うレベルの繊細な作業なんですが、何とシャシモデル300台分全品にこの仕上げを施すという、今思えば相当無茶なチャレンジを敢行しました。作業は大変な手間なのですが、これをやるとやらないとでは、見栄え効果が全然違います。購入された方も驚いておられましたし、かくいう私も驚きました。
とはいえ、結構「いいお値段」ですよね
購入するには勇気のいる金額だと思います。
興味を持たれない方にとっては「意味わからん」と言われることもありました。まあ当然ですよね。が、そこに込めたこだわりや想いはプライスレスですし、本製品の同等仕様でかつ、300台という数量をこの価格で実現するのは余所さんでは難しいと思います。やれるもんならやってみろ!!って感じです。
最後に一言。
マツダエースがプロデュースするグッズはマツダブランドのフィロソフィーを感じさせるものを目指しています。手前味噌ですが、決めたからには実現するまで苦労を厭わず「しつこく」取り組む姿勢も、マツダのクルマづくりに通じるものではなかろうか?と自負しております。
くじけそうになった時、某マンガの名ゼリフ「諦めたらそこで試合終了」が何度も頭をよぎり、また、賛同いただいた声を裏切ることはできない、という思いがモチベーションとなり、構想から実現まで約3年もかかってしまいましたが、かけがえのない経験を得ることができました。
このような企画を一回コッキリで終わらせるつもりもありません。
この気持ちを途切らせることなく、熱く痺れるアイテムをリリースし続けていく所存です。